研究倫理審査委員会の事務局運営、このままで大丈夫? 企業が見直したい人材不足・属人化と体制づくり

コラム

― 「今は回っている」で安心しない。持続可能な研究倫理審査体制を考える ―

研究倫理審査委員会の事務局運営|人材不足・属人化・役割整理・委員会体制の見直し

「研究倫理審査委員会は設置しているし、審査もできている」

「これまで大きな問題なく運営できている」

そう聞くと、特に問題はないように思えるかもしれません。

一方で、企業の研究倫理審査や委員会運営についてお話を伺っていると、こんな悩みを耳にすることがあります。

「研究倫理審査の実務を分かる人が社内に限られている」

「経験のある担当者に判断が集中している」

「異動や退職があったとき、誰が引き継げるのか不安がある」

「新しく担当になった人を育てたいが、社内に教育の仕組みがない」

「そもそも、どこまでが事務局の仕事なのか分からなくなってきた」

「委員会の構成を長く見直していないけれど、このままでよいのだろうか」

研究倫理審査委員会が「今、回っていること」と、「これからも安定して回り続けられること」は、同じではありません。

特に企業では、人事異動や組織変更、担当者の退職などをきっかけに、それまで見えていなかった課題が突然表面化することがあります。

今回は、企業が研究倫理審査委員会を継続的に運営していくうえで考えておきたい、事務局の人材、属人化、業務範囲、人材育成、委員会体制について考えてみます。

1.研究倫理審査委員会事務局では、なぜ人材不足が起こりやすい?

研究倫理審査委員会の事務局というと、

  • 申請書類を受け付ける。
  • 委員に資料を送る。
  • 委員会の日程を調整する。
  • 議事録を作成する。

といった事務的な業務をイメージする方もいるかもしれません。

もちろん、これらも重要な業務です。しかし、実際の研究倫理審査委員会の事務局運営では、それだけでは対応できない場面があります。

例えば、提出された研究計画書や説明文書を確認するとき。

単に「必要な書類が揃っているか」を見るだけではなく、研究の内容をある程度理解したうえで確認しなければならないことがあります。

また、倫理指針を理解し、申請者や委員とコミュニケーションを取りながら、審査を滞りなく進める必要もあります。

つまり、研究倫理審査委員会の事務局には、研究への理解、倫理指針への理解、委員会運営、申請者や委員との調整など、複数の能力が求められることがあります。

ここに、人材確保の難しさがあります。

研究と倫理審査の双方を理解し、さらに委員会運営まで経験している人材を、必要なタイミングで確保できるとは限りません。

その結果、「分かる人に仕事が集まる」という状態が生まれやすくなります。

2.研究倫理審査委員会の事務局運営が属人化する理由

経験豊富な担当者がいることは、研究倫理審査委員会にとって大きな強みです。

過去の審査事例を知っている。

委員会でどのような点が議論されてきたのかを理解している。

申請者から相談を受けたときにも、これまでの経験を踏まえて対応できる。

こうした知識や経験は、手順書を読むだけで簡単に身につくものではありません。

一方で、その経験が一人、あるいは少数の担当者だけに蓄積されている場合には注意が必要です。

「このケースは○○さんに聞かないと分からない」

「手順書はあるけれど、実際の判断は経験者に確認している」

「新人に教えられる人も、その担当者しかいない」

こうした状態でも、経験者がいる間は問題なく運営できているように見えます。

ところが、異動や退職、組織変更などが起こった瞬間に、「この業務、次は誰ができるのだろう?」という問題が表面化します。属人化は、

異動や退職によって突然発生するわけではありません。それまで見えていなかった課題が、人の入れ替わりによって顕在化するとも考えられます。

3.研究倫理審査委員会事務局は、どこまで対応する?

人手不足と並んで、一度整理しておきたいのが、「研究倫理審査委員会事務局は、どこまでを担当するのか」という問題です。

事務局の業務範囲は、企業や組織によって異なります。申請受付、書類確認、委員との調整、委員会開催、議事録作成、審査結果の通知、文書管理などを中心とする場合もあります。

一方で、実際には、

「この研究は倫理審査が必要ですか?」

「この研究計画で進めても大丈夫でしょうか?」

「説明文書はこれでよいでしょうか?」

「研究途中で内容を変更したいのですが、どうすればよいでしょうか?」

といった相談が事務局に寄せられることもあります。

ここで難しいのが、「事務局運営」と「研究そのものへの支援」の境界です。

どこまでを事務局が担うのか。

どこから委員長や委員へ確認するのか。

どこから研究支援など別の機能が担うのか。

この役割分担が曖昧なままだと、さまざまな相談が事務局に集中し、担当者の負担が大きくなる可能性があります。

「人が足りない」と感じていた問題の一部が、実は人数ではなく、役割や責任範囲の問題ということもあります。

4.事務局の人手不足は「業務整理」で改善できることも

研究倫理審査委員会の事務局が忙しくなると、「もう一人、担当者を増やそう」という話になりやすいかもしれません。

もちろん、本当に人員が不足している場合もあります。しかし、人を増やす前に、現在の業務を一度整理してみることも重要です。

例えば、

  • 定型的に対応できる業務。
  • 研究や倫理指針の知識が必要な業務。
  • 経験を踏まえた判断が必要な業務。
  • 委員長や委員に確認すべき業務。
  • 事務局以外が担った方がよい業務。

このように整理してみると、

「これは必ずしも経験者が対応しなくてもよい」

「ここだけは専門性のある人が必要」

「この相談まで事務局が抱えなくてもよいのでは」

といったことが見えてくる場合があります。

人手不足を解消する方法は、必ずしも「同じ仕事をする人をもう一人増やす」ことだけではありません。

業務そのものを整理し、誰が何を担当するのかを考え直す。

それだけでも、事務局運営のあり方が変わる可能性があります。

5.研究倫理審査委員会事務局の担当者をどう育てる?

人材確保と同時に考えたいのが、人材育成です。

担当者が異動・退職するたびに、研究倫理審査委員会の経験者を外部から採用できるとは限りません。

そのため、長期的には、研究倫理審査委員会の実務を担える人材を、社内で育てられる仕組みも必要になります。

ここで注意したいのは、研究倫理について学ぶことと、研究倫理審査委員会の事務局業務を実際に行えることは、必ずしも同じではないという点です。

実務では、

  • 研究計画書のどこを確認するのか。
  • 申請者に何を確認するのか。
  • 事務局で対応できることは何か。
  • どの段階で委員長や委員へ確認するのか。
  • 変更申請や継続審査をどのように管理するのか。

といったことを、一つずつ経験していく必要があります。

だからこそ、人材育成では、「倫理指針を知っている人」を増やすだけではなく、「実際の事務局業務を進められる人」をどう育てるかという視点が重要になります。

6.委員構成や委員会運営も、定期的に見直す

事務局の体制とあわせて、一度確認しておきたいのが研究倫理審査委員会そのものの体制です。

例えば、

  • 現在の委員構成は、取り扱っている研究内容に合っているでしょうか。
  • 必要な専門性を持つ委員が参加できているでしょうか。
  • 委員構成は適切でしょうか。
  • 一部の委員に議論や判断が集中していないでしょうか。
  • 委員に対する教育や情報共有は十分でしょうか。
  • 規程や手順書と、実際の運営にズレはないでしょうか。

企業の研究領域や事業内容は変化していきます。

一方で、研究倫理審査委員会は、一度つくられた体制がそのまま長く続くこともあります。

これまで問題が起きていないからといって、現在の研究や組織に最適な状態であるとは限りません。

「問題が起きているか」ではなく、「今の自社に合った委員会になっているか」。

ときどき、この視点から見直してみることも大切です。

7.研究倫理審査委員会の事務局運営を、外部に相談するという選択肢

研究倫理審査委員会の運営に課題を感じても、「事務局をすべて外部委託するほどではない」と考える企業も多いかもしれません。もちろん、すべてを外部に任せる必要はありません。

例えば、

「現在の委員構成について、第三者の視点から一度確認してほしい」

「事務局業務を棚卸しして、担当範囲を整理したい」

「新任担当者向けの教育を整えたい」

「規程や手順書と実際の運用にズレがないか確認したい」

「経験者が退職・異動する前に、引継ぎできる状態にしたい」

「一時的に不足している実務だけ支援してほしい」

といった相談の仕方もあります。研究倫理審査委員会の体制整備というと、大きなプロジェクトをイメージするかもしれません。

しかし、最初からすべてを変える必要はありません。

「今、少し気になっているところ」だけを外部の専門家と一緒に確認する。

そこから始める方法もあります。

まとめ「今、回っている」だけで研究倫理審査体制を判断しない

研究倫理審査委員会の事務局運営では、人材不足や属人化が課題になることがあります。

しかし、その背景にあるのは、単純な人数不足だけとは限りません。

  • 業務範囲が曖昧になっている。
  • 経験者に判断が集中している。
  • 新しい担当者を育てる仕組みがない。
  • 委員会体制を長期間見直していない。

こうした複数の課題が重なった結果として、「人が足りない」という形で表面化していることもあります。

だからこそ、研究倫理審査委員会の体制を考えるときには、

「今、委員会が回っているか」だけではなく、「誰かが抜けても、これからも回り続けられるか」

という視点を持つことが大切です。

ヘルスケアサーカスでは、企業の研究倫理審査や研究倫理審査委員会の運営について、日常的な事務局実務の支援だけでなく、業務整理、人材育成、委員会体制の見直しなど、企業の状況に応じた支援を行っています。

「今すぐ困っているわけではないけれど、この体制のままでよいのか少し気になっている」

「担当者の異動・退職をきっかけに、今後の事務局体制を考えたい」

「現在の委員会や事務局運営について、一度第三者の視点から確認してほしい」

といった段階からでもご相談いただけます。

問題が起きてから立て直すのではなく、問題になる前に気づき、必要なところから整えていく。

研究倫理審査委員会を持続可能なものにするために、まずは現在の体制を一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

FAQ

Q1.研究倫理審査委員会の事務局業務は外部委託できますか?

はい。研究倫理審査委員会の事務局業務は、組織の体制や業務内容に応じて、全部または一部について外部支援を活用する方法があります。

例えば、日常的な事務局実務の支援だけでなく、一時的な人員不足への対応や、現在の業務・運営体制の整理など、必要な範囲に限定して外部の専門家に相談することも考えられます。

どの業務を社内で担い、どの部分に外部支援を活用するかは、現在の体制や課題に応じて検討することが大切です。

Q2.研究倫理審査委員会の運営について、外部の専門家に相談できますか?

はい。事務局業務そのものを外部委託するだけでなく、現在の運営体制について第三者の視点から相談する方法もあります。

例えば、「事務局の役割や業務範囲を整理したい」「担当者の異動・退職に備えたい」「人材育成の仕組みを考えたい」「現在の委員会体制について確認したい」といった段階から相談することも可能です。

必ずしも大きな問題が発生してから相談する必要はありません。

Q3.研究倫理審査委員会の事務局運営について、どのようなタイミングで見直しを検討すればよいですか?

例えば、担当者の異動・退職や組織変更が予定されているとき、特定の担当者への業務集中が気になったとき、新しい担当者の育成が必要になったときなどは、現在の運営体制を確認する一つのタイミングです。

また、大きな問題が起きていなくても、「今の体制のままでよいのだろうか」と感じた段階で、一度整理してみる方法もあります。

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