ヘルスケア事業に挑戦する企業のための倫理審査ガイド Vol.6

コラム

倫理審査を外部委託すれば社内体制は不要?企業に必要な「倫理審査の運用支援」とは【2026年版】

倫理審査を外部委託しても社内体制は必要?企業に必要な倫理審査の運用支援

「倫理審査は外部に依頼する予定だから、社内では特に体制を整えなくても大丈夫ですよね?」

企業の研究や実証を支援していると、こうした認識に出会うことがあります。

たしかに、自社に倫理審査委員会がなくても、外部の倫理審査委員会(外部IRB)に審査を依頼できる場合があります。

でも、「倫理審査を外部委託できること」と、「研究を適切に実施するための社内体制が必要ないこと」は別の話です。

外部IRBが担うのは、あくまで「審査」です。その研究を実際に動かすのは、研究を実施する企業や研究機関です。

今回は、倫理審査そのものから少し視野を広げて、企業が研究や実証実験を進めるうえで意外と見落としやすい「研究を適切に運用するための体制」について考えてみます。

なお、本記事では、研究を適切に実施するための社内体制やルール、倫理審査前後の対応を整える支援を、「倫理審査の運用支援」と呼びます。


1.外部IRBに依頼すれば、それで準備完了?

まず、分けて考えたいことがあります。

「研究を審査すること」と「研究を実施すること」です。

外部IRBは、研究計画について倫理的・科学的な観点などから審査します。

一方、審査された研究を実際に進めるのは、研究を実施する側です。

たとえば、

  • 誰が研究を管理するのか
  • 必要な情報をどのように管理するのか
  • 研究計画に変更が生じたらどうするのか
  • 関係者が必要なルールや役割を理解しているのか

こうした研究実施のための体制まで、外部IRBが代わりに担うわけではありません。

つまり、倫理審査を外部委託しても、研究を適切に実施するための体制は企業側にも必要です。

外部IRBの役割や選び方については、Vol.2「倫理審査の外部委託先はどう探す?」で詳しく解説しています。


2.倫理審査は「通れば終わり」ではない

倫理審査の準備をしていると、「まずは審査を通さなければ」という意識になりがちです。もちろん、適切に倫理審査を受けることは重要です。でも、本来のゴールは「倫理審査で承認を得ること」ではありません。

承認された研究計画に沿って研究を実施し、得られた結果を次の研究や製品・サービスにつなげていく。

そのための倫理審査です。

ところが、申請時には問題がないように見えても、実際に研究を始めてから、「この場合、誰が判断するんだろう?」、「この手順、社内で決めていなかった」、「研究計画書にはこう書いてあるけれど、実際の運用ではできていない」といった問題が見つかることがあります。

審査を受けた研究計画と、実際の研究運用がずれてしまう。これは避けたい状態です。


3.「研究計画書に書いてあるから大丈夫」とは限らない

もう一つ、企業の研究支援をしていて感じることがあります。

研究計画書の中では、きちんと手順が決められている。

それだけを見ると、問題なく研究を進められそうに見えます。でも、実際の社内でその手順を実行できる状態になっているでしょうか。

研究計画書に「誰が何をするか」を書くことと、実際の組織でその役割や手順が共有され、実行できることは同じではありません。また、社内の研究ルールや手順が整理されていないため、本来は組織として決めておいた方がよいことまで、研究ごとに一から検討し、研究計画書に細かく記載することになる場合もあります。もちろん、研究計画書には、その研究を実施するために必要な事項を記載します。

ただし、研究計画書と、企業として研究を運用するためのルールや手順は同じものではありません。

研究をするたびに、一から考えるのか。それとも、企業として必要な仕組みを整えたうえで、それぞれの研究を設計するのか。今後も継続して研究や実証に取り組む企業ほど、一度考えておきたいポイントです。


4.関係者が多い研究ほど、「誰かが見ている」に注意

企業の研究や実証では、一つのプロジェクトにさまざまな関係者が関わることがあります。

事業部門、研究部門、法務・コンプライアンス、情報管理に関わる部門。さらに、医療機関や大学、外部委託先などが加わることもあります。特に組織が大きい企業では、関係部署や意思決定のプロセスが増えることもあります。

一方、これは大企業だけの問題ではありません。スタートアップや比較的小さな組織でも、共同研究先や外部パートナーが増えれば、関係者は多くなります。

そこで注意したいのが、「誰かが確認していると思っていた」という状態です。

プロジェクト内では共有されていても、本来確認すべき部署には十分に情報が届いていなかった。あるいは、それぞれが自分以外の誰かが対応していると思っていた。関係者が増えるほど、こうした認識のずれは起こりやすくなります。

だからこそ重要なのは、会社の規模そのものではありません。

必要な人が関わり、それぞれの役割や責任が整理されていることです。

そしてヘルスケア領域では、一つの研究上の問題が、その研究だけの問題で終わるとは限りません。

研究参加者や患者さん、共同研究先となる医療機関や大学との信頼関係。場合によっては、企業やサービスそのものへの信頼にも関わります。

だからこそ、「倫理審査を受けたから大丈夫」ではなく、「企業として研究を適切に実施できるか」まで考えることが重要です。


5.体制づくりも、研究への投資の一つ

研究や実証実験には、お金がかかります。ただ、それだけではありません。担当者の時間、共同研究先との調整、データの取得や解析。そして何より、研究に参加してくださる方の協力があります。

研究参加者は、自分の時間を使い、データを提供し、ときには一定の負担を伴いながら研究に協力してくださいます。もし研究を適切に実施できなければ、失われる可能性があるのは、企業が投じた時間や費用だけではありません。研究に協力してくださった方の時間や協力を、十分に活かせなくなる可能性もあります。

だからこそ、研究を適切に進めることには意味があります。そして企業がそこまでして研究を行うのは、その先に実現したいものがあるからだと思います。

新しいサービスをつくりたい。製品の価値を確かめたい。エビデンスをつくりたい。

そして、その先で患者さんや人々の健康に貢献したい。

だからこそ、私たちは、研究を適切に進めるための体制づくりも、研究への投資の一つだと考えています。

必要以上に複雑な仕組みをつくる必要はありません。一方で、必要な準備まで省いてしまえば、せっかく時間や費用をかけた研究を十分に活かせなくなる可能性があります。それは、あまりにももったいないです。

必要なことを、必要な形で整えておく、これが結果として、それが研究をスムーズに進め、次の事業につなげることにもなります。


6.ヘルスケアサーカスの「倫理審査の運用支援」

ヘルスケアサーカスでは、倫理審査の支援に加え、企業が研究・実証を適切に進めるための「倫理審査の運用支援」も行っています。

目的は、単に「倫理審査を通すこと」ではありません。企業や研究の状況に応じて、

  • 研究を実施するための社内体制
  • 必要なルールや手順
  • 関係者の役割
  • 倫理審査前後の運用

などを整理し、研究を実際に運用できる状態をつくることを支援します。

必要な体制は、企業規模や研究内容、共同研究先、現在の社内体制などによって異なります。だからこそ、決まった仕組みをそのまま当てはめるのではなく、

「この企業が、これから適切に研究・実証を続けていくためには何が必要か」

を一緒に考えていきます。

倫理審査を初めて外部委託する企業はもちろん、すでに複数の研究や実証を行っていて、今後に向けて社内の研究体制を整理したい企業からのご相談にも対応しています。


7.研究を始める前に、一度整理しておきたいこと

倫理審査の委託先が決まったら、次は、実際に研究を進めるための体制にも目を向けてみましょう。

たとえば、

研究を社内でどのように管理するのか。

承認された研究計画を、実際の現場で無理なく実施できるのか。

研究途中で変更が生じたとき、どのように対応するのか。

関係部署や共同研究先と、必要な情報をどのように共有していくのか。

こうしたことも、研究を実際に進めていくうえでは大切なポイントです。

もし、「そういえば、そこまで整理できていなかったかもしれない」と思うところがあれば、一度立ち止まって、今の体制を確認してみるのも一つです。

最初からすべてが整っている必要はありません。

研究の内容や企業の状況に合わせて、何が必要なのかを一緒に考え、少しずつ整えていく。

私たちは、そんな研究・実証の進め方をサポートしたいと考えています。


まとめ せっかくの研究を、その先につなげるために

倫理審査を外部委託することと、研究を適切に実施するための社内体制を整えることは別のものです。

倫理審査を受けることはゴールではありません。

研究を適切に実施し、その結果を次の研究や事業につなげていく。そして、その先にいる患者さんや人々の健康につなげていく。そこまでできて初めて、研究への投資が次の価値につながっていきます。

また、研究には、時間も費用も、多くの人の力も必要です。そして、研究に参加してくださる方の協力があります。

だからこそ、その挑戦が「研究はしたけれど、活かせなかった」で終わってしまうのは、私たちも非常にもったいないと感じています。

きちんと研究に取り組み、その成果を未来につなげたい。

そんな企業の挑戦であれば、ヘルスケアサーカスは、倫理審査だけでなく、その前後も含めて積極的にサポートしたいと考えています。

「倫理審査は外部委託する予定だけれど、社内体制がこれでよいのかわからない」、「今後、研究・実証を増やしていくために、一度運用の仕組みを整理したい」、そんな段階からでも、お気軽にご相談ください。

FAQ

Q1. 倫理審査を外部委託すれば、社内に研究体制を整える必要はありませんか?

いいえ。外部の倫理審査委員会(外部IRB)に倫理審査を依頼することと、研究を適切に実施するための社内体制を整えることは別のものです。研究内容や実施体制に応じて、必要な役割やルール、手順などを整理しておくことが重要です。

Q2. 倫理審査の運用支援では、どのようなことを相談できますか?

ヘルスケアサーカスでは、企業の研究・実証における社内体制、必要なルールや手順、関係者の役割、倫理審査前後の運用などについて支援しています。必要な体制は研究内容や企業の状況によって異なるため、個別の状況を確認しながら整理します。

Q3. すでに外部IRBへの依頼先が決まっていても相談できますか?

はい。倫理審査の委託先がすでに決まっている場合でも、研究を適切に実施するための社内体制や運用についてご相談いただけます。今後、複数の研究・実証を継続して行うために、研究体制を整理したい場合にも対応しています。

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