「社員に試すだけだから、倫理審査は不要」は本当? 企業の研究・実証でよくある勘違い

「社員に試すだけだから、倫理審査は不要」は本当?
結論からいうと、社員・従業員を対象にした実証実験だからという理由だけで、倫理審査が不要になるわけではありません。
「社員同士で、ちょこっと使って試すだけなんです」
「簡単にデータを測定するだけです」
「患者さんを対象にするわけではないので、研究や倫理審査は関係ないですよね?」
企業の研究や実証実験についてお話を伺っていると、このようなご相談をいただくことがあります。
たしかに、「社員に少し試してもらうだけ」と聞くと、大がかりな研究には感じないかもしれません。
でも、「社員を対象にするから、倫理審査は不要」とは限りません。
「社員だから」だけでは決まらない
倫理審査が必要かどうかは、単純に「誰を対象にするか」だけで決まるものではありません。
たとえば、
- 何のために実施するのか
- 社員に何をしてもらうのか
- どのようなデータを取得するのか
- 取得したデータをどのように利用するのか
など、実際の内容を確認しながら考える必要があります。
そのため、同じ「社員に試してもらう」というケースでも、倫理審査が必要な場合もあれば、不要な場合もあります。
「社内でやるから大丈夫」
「少人数だから大丈夫」
「ちょっと測定するだけだから大丈夫」
とは、一概には言えないのです。
むしろ「社員だからこそ」考えておきたいことも
ここでもう一つ、見落とされやすいポイントがあります。
それが、会社と社員の関係性です。
社員を対象にする場合には、雇用関係や社内の上下関係によって、参加を断りにくくなる可能性があります。
たとえば、上司から、
「新しい製品のテストをするから、参加してもらえる?」
と言われたらどうでしょうか。
本人は、本当に自由に「参加しません」と言えるでしょうか。
もちろん、会社側には強制するつもりがなかったとしても、
「断ったら印象が悪いかな」、「みんな参加しているし、自分だけ断りにくいな」と感じる人がいるかもしれません。
だからこそ、社員を対象に研究や実証を行う場合には、本人の自由な意思で参加・不参加を選べる環境になっているかを考えることも大切です。
こうした配慮は、倫理審査が必要かどうかにかかわらず、研究・実証を進めるうえで欠かせません。
会社に知られたくないデータはありませんか?
もう一つ考えておきたいのが、取得するデータです。
ヘルスケア領域の実証実験やPoCでは、健康状態に関する情報や測定データなどを扱うことがあります。
社員本人からすると、「この情報は会社には知られたくない」ということもあるかもしれません。
- 誰がデータを見るのか。
- どのように管理するのか。
- 会社にはどこまで情報が伝わるのか。
こうした点も、実施内容に応じて事前に整理しておく必要があります。
「ちょっと試すだけ」の段階で、一度確認を
社員を対象にする実証実験やPoCだからといって、すべてに倫理審査が必要というわけではありません。
一方で、
「社員だから倫理審査は不要」
「社内でちょっと試すだけだから研究ではない」
とも限りません。
実際には、実施する目的や内容、取得するデータ、その後の利用方法などによって整理が変わります。
そして、実証を始めてから「実は確認が必要だった」と分かると、計画を見直さなければならないこともあります。
だからこそ、まだ「まずは社内でちょっと試してみよう」と考えている段階で、一度確認しておくことをおすすめします。
「うちのケースは倫理審査が必要?」
「社員を対象に実施したいけれど、この進め方で大丈夫?」
「社員を対象に実施するには、そもそもどんな体制を整える必要がある?」
ヘルスケアサーカスでは、こうしたご相談に対して、倫理審査の要否判断だけでなく、研究・実証に必要な社内体制や実施体制づくりについても、一緒に考え、サポートしています。
また、倫理審査の外部委託や、研究計画・実施体制に関するコンサルティングにも対応しています。
「これって研究なの?」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 社員だけを対象にした実証実験でも、倫理審査が必要ですか?
社員を対象にするという理由だけで、倫理審査が必要・不要と判断することはできません。実施目的や内容、取得するデータ、結果の利用方法などによって異なります。
Q. 少人数で試すだけなら、倫理審査は不要ですか?
人数が少ないことだけを理由に、倫理審査が不要になるとは限りません。「少人数だから」「社内だから」だけで判断せず、実施内容を確認することが大切です。
Q. 社員本人が同意していれば、倫理審査は不要ですか?
本人から同意を得ることと、倫理審査が必要かどうかは別の論点です。実施目的や内容、取得するデータ、結果の利用方法などを踏まえて確認する必要があります。