ヘルスケア事業に挑戦する企業のための倫理審査ガイド Vol.8
治験以外でも倫理審査は必要?企業の研究・実証実験で知っておきたいポイント【2026年版】

「倫理審査は、医薬品の治験で必要になるものでは?」
「治験ではない実証実験なら、倫理審査は必要ないのでは?」
ヘルスケア分野で新しい商品やサービスを開発する際、このように考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、倫理審査が必要になるのは、治験だけではありません。企業が行うヘルスケア分野の研究や実証実験でも、その内容によっては倫理審査が必要になる場合があります。
今回は、治験とそれ以外の研究の違いや、企業が倫理審査を検討する際に知っておきたいポイントを解説します。
1.倫理審査は治験だけのものではない
医薬品や医療機器などの承認取得を目的として実施される治験では、GCP省令などに基づき、治験審査委員会(IRB)による審査が行われます。
一方、治験以外にも、人を対象とした研究は数多く存在します。例えば、次のような研究です。
- 健康管理アプリを使用した際の健康状態の変化を調べる研究
- ウェアラブルデバイスで取得したデータを分析する研究
- 食品の摂取による健康指標の変化を評価する研究
- 医療機関と共同で患者さんのデータを分析する研究
- 生活習慣や健康状態についてアンケートを行う研究
これらは、必ずしも治験に該当するわけではありません。しかし、研究の目的や方法、取り扱う情報などによっては、倫理審査が必要になることがあります。
つまり、「治験ではないこと」と「倫理審査が不要であること」は、同じではないのです。
2.治験以外の研究でも、倫理審査が必要になることがある
日本では、人を対象とする研究について、その内容に応じて異なる法令や指針が定められています。
例えば、医薬品や医療機器の治験にはGCP省令が適用されますが、治験以外の研究でも、「臨床研究法」や「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」などに基づく対応が必要になる場合があります。
こうしたルールでは、研究の内容に応じて、倫理審査委員会等による審査や、研究対象者への説明・同意、個人情報の適切な取り扱いなどが求められます。
一方で、企業が実施するすべての研究や実証実験が、これらの法令・指針の対象になるわけではありません。
大切なのは、「治験ではないから関係ない」と考えるのではなく、自社の研究・実証実験にどのような対応が必要なのかを確認することです。
3.企業の研究・実証実験で注意したいこと
ヘルスケア分野では、新しい商品やサービスの開発過程で、さまざまな実証実験が行われています。
例えば、健康管理アプリを開発する企業が、利用者の健康状態の変化を調べるケースを考えてみましょう。
同じアプリを使った実証実験でも、「使いやすさを確認したい」という場合と、
「アプリの使用によって健康状態が改善するかを検証したい」という場合では、実施する目的が異なります。
もちろん、目的だけで倫理審査の要否が決まるわけではありません。
しかし、何を明らかにするために、誰を対象として、どのようなデータを取得・分析するのかによって、必要な対応が変わる可能性があります。また、医療機関との共同研究や、患者さんの情報を取り扱う研究では、研究開始前に確認すべき事項が複数存在します。
事業としての実証実験であっても、研究としてどのように位置づけられるのかを整理しておくことが大切です。
4.倫理審査が必要かわからない場合は?
「治験ではないことはわかっているけれど、倫理審査が必要なのかわからない」
「自社で実施する研究でも、倫理審査を受ける必要があるのだろうか?」
このような場合には、研究倫理の専門家や、倫理審査に関する外部のコンサルティングサービスに相談することも一つの方法です。
倫理審査が必要かどうかを検討する際には、研究の目的、対象者、取得するデータ、実施方法など、さまざまな情報を整理する必要があります。
また、医療機関や大学との共同研究では、共同研究先との役割分担や、研究を実施するために必要な手続きについても確認しておくことが大切です。
一方で、共同研究先との関係性や立場の違いから、確認や相談がしづらい場合もあるかもしれません。こうした場合にも、外部の専門家を活用することで、第三者の立場から必要な事項を整理し、研究を進めやすくなることがあります。
なお、倫理審査が必要と判断された場合でも、必ずしも自社で倫理審査委員会を設置しなければならないわけではありません。研究内容や適用される制度に応じて、外部の倫理審査委員会への審査依頼(倫理審査の外部委託)を検討することもできます。
ただし、外部委託が可能かどうかは、適用される法令・指針や委員会の受託条件などによって異なります。倫理審査の外部委託については、以下のコラムでも解説しています。
関連記事:
Vol.2|倫理審査の外部委託先はどう探す?企業が知っておきたい外部IRBの選び方【2026年版】
5.まとめ 治験以外でも、研究内容によって倫理審査が必要になる
倫理審査は、医薬品や医療機器の治験だけで必要になるものではありません。
企業が行うヘルスケア分野の研究や実証実験でも、研究内容によっては倫理審査が必要になる場合があります。
一方で、すべての実証実験に倫理審査が必要というわけでもありません。
大切なのは、「治験ではないから不要」と判断するのではなく、実施する研究・実証実験の内容に応じて、必要な対応を確認することです。
研究開始後に必要な手続きが判明すると、計画の見直しやスケジュールの変更が必要になることもあります。
そのため、研究・実証実験を計画する段階から、倫理審査の要否や適用されるルールを確認しておくことをおすすめします。
ヘルスケアサーカスでは、研究・実証実験の倫理審査に関するご相談を承っています
ヘルスケアサーカス株式会社では、企業の研究・実証実験に関する倫理審査の要否判断から、研究計画の作成支援、外部の倫理審査委員会による審査、研究開始後の運用支援まで対応しています。
「自社の実証実験に倫理審査が必要かわからない」
「治験ではない研究について、どこに相談すればよいかわからない」
「倫理審査を外部に委託したい」
そのような場合には、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1.治験以外でも倫理審査は必要ですか?
はい。治験以外でも、人を対象とする生命科学・医学系研究など、研究内容によっては倫理審査が必要になります。
Q2.企業の実証実験にも倫理審査は必要ですか?
実証実験の目的や内容によって異なります。すべての実証実験に倫理審査が必要なわけではありませんが、健康状態への影響を評価する研究などでは、倫理審査が必要になる場合があります。
Q3.医療機関と共同研究を行わない場合でも、倫理審査は必要ですか?
必要になる場合があります。倫理審査の要否は、医療機関との共同研究であるかどうかだけで決まるものではありません。
Q4.治験以外の倫理審査を外部委託することはできますか?
研究内容や適用される法令・指針、審査委員会の受託条件などによっては、外部の倫理審査委員会へ審査を依頼することが可能です。