ヘルスケア事業に挑戦する企業のための倫理審査ガイド Vol.3

コラム

倫理審査の費用・期間はどれくらい?企業が申請前に知っておきたいポイント【2026年版】

― 研究・実証をスムーズに進めるために押さえたい、倫理審査の費用とスケジュール ―

企業がヘルスケア領域で、人を対象とした研究や実証実験を行う際、人を対象とする研究に関する倫理審査(以下「倫理審査」といいます)が必要になることがあります。

特に、「人を対象とする生命科学・医学系研究」に該当する研究を実施する場合には、適用される法令・指針等を確認し、必要な手続きを適切に行うことが重要です。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、企業の担当者にとって身近な例で考えると、人を対象に、健康や医療に関するデータを取得・分析する研究や実証実験などを企画する際には、倫理審査が必要かどうかを確認しておく必要がある、と考えるとイメージしやすいと思います。

実際に企業から倫理審査についてご相談をいただく際、よく聞かれるのが、

「倫理審査には、どれくらいの費用がかかりますか?」

「倫理審査には、どれくらいの期間がかかりますか?」

「申請してから、どれくらいで承認されますか?」

「研究・実証を始めるまで、どれくらいの期間を見ておけばいいですか?」

といった質問です。

事業の予算やスケジュールを考えるうえで、費用と期間は非常に重要です。

一方で、倫理審査について調べてみると、審査機関によって費用や期間の案内が異なり、「結局、自社の場合はいくらかかるの?」「どれくらい時間がかかるの?」と分かりにくく感じる方も多いのではないでしょうか。

そして、研究・実証のスケジュールを考えるうえで特に注意したいのが、「倫理審査にかかる期間」と「研究・実証を開始できるまでの期間」は同じではないということです。

この記事では、企業の研究・実証担当者に向けて、倫理審査の費用・期間の考え方と、申請から承認、研究・実証を開始するまでのスケジュールについて解説します。


1.倫理審査の費用はどれくらい?

倫理審査の費用は、審査機関によって料金体系が異なります。

研究内容にかかわらず一定の審査料を設定している場合もあれば、審査方法や研究内容、共同研究機関の数などによって費用が変わる場合もあります。

そのため、「倫理審査の相場はいくら?」という質問に対して、一律の金額を示すことは簡単ではありません。

具体的な費用については、自社の研究内容を伝えたうえで、依頼を検討している倫理審査委員会へ確認する必要があります。

「費用」だけでなく、研究内容に応じた審査を受けることが重要

倫理審査の依頼先を検討する際には、費用だけでなく、自社の研究内容に応じた審査を受けられるかという視点も重要です。研究にはさまざまな領域や方法があり、研究内容によって、審査に必要となる専門的な知見や確認すべき論点も異なります。

倫理審査は、単に「承認を得るための手続き」ではありません。研究対象者の権利・安全・福祉への配慮や、研究計画の倫理的・科学的な妥当性などを確認することに意味があります。

そのため、「承認されたかどうか」だけではなく、その研究内容について必要な観点から審査が行われることが重要です。費用はもちろん大切ですが、価格だけにとらわれず、自社の研究内容に応じた審査を受けられるかも含めて検討するとよいでしょう。


2.倫理審査にはどれくらいの期間がかかる?

費用と同じくらい多いのが、「倫理審査には、どれくらいの期間がかかりますか?」という質問です。

倫理審査にかかる期間は、審査機関の開催頻度や審査方法、申請内容、資料の準備状況、審査後の修正の有無などによって異なります。

そのため、倫理審査に必要な期間を一律に示すことは難しいのが実情です。ここで企業の担当者に特に知っておいていただきたいのが、

「倫理審査にかかる期間」と「研究・実証を開始できるまでの期間」は同じではない、ということです。

倫理審査を受けて研究・実証を開始するまでには、大まかに次のような工程があります。

研究・実証内容の整理

研究デザイン・実際の運用方法の検討

研究計画書などの申請資料の作成

申請前の確認・修正

倫理審査への申請

倫理審査

指摘事項がある場合は修正・再確認

承認

研究・実証開始

たとえ倫理審査そのものが比較的短期間で行われる場合でも、その前段階の準備や審査後の修正に時間を要することがあります。

そのため、「倫理審査に何日かかるか」だけをもとに、研究・実証の開始日を決めないことが大切です。


3.倫理審査をスムーズに進めるには「審査前」の準備が重要

企業の研究・実証で、意外と時間がかかるのが、倫理審査を申請するまでの準備です。

倫理審査を依頼する前には、研究内容を整理し、研究計画書などの申請資料を準備する必要があります。

初めて倫理審査を受ける場合には、

「研究計画書に何を書けばいいのか分からない」

「どこまで詳しく決めておく必要があるのか分からない」

といったところで時間がかかることもあります。

倫理審査では、単に「何を調べる研究なのか」を記載すればよいわけではありません。

研究の目的・方法、研究対象者への配慮、同意取得の方法、個人情報の取り扱い、データの取得・保管方法、研究対象者に生じ得る負担やリスク、研究実施者や共同研究機関の役割など、研究内容に応じてさまざまな事項を整理する必要があります。

書類の「記載漏れ」だけが問題とは限らない

また、申請資料の不足が、単純な「記載漏れ」とは限りません。

たとえば、研究計画書にデータの管理方法について必要な記載がなかった場合。

実際の運用はすでに決まっていて、研究計画書への記載を忘れていただけであれば、内容を確認して追記できます。

一方で、

「誰がデータを管理するのか決まっていない」

「どこに保存するのか決まっていない」

「誰がアクセスできるのか決まっていない」

という状態であれば、文章を修正するだけでは解決しません。まずは研究を実施する企業や関係者の間で、実際の運用や手順を決める必要があります。さらに、情報システム部門や法務部門、共同研究先などとの調整が必要になれば、その分時間もかかります。

つまり、倫理審査で確認事項が生じた際、必ずしも「書類を直せばすぐに解決する」とは限らないのです。

だからこそ、研究・実証の開始時期が決まっている場合には、審査直前になって準備を始めるのではなく、倫理審査が必要になることが分かった段階で、早めに準備を進めることが重要です。

大切なのは、単に「審査を早くしてもらうこと」ではありません。「研究・実証をスムーズに始められる状態を、できるだけ早くつくること」まで含めて考えることが重要です。


4.企業では「倫理審査以外の手続き」にも時間がかかる

もう一つ、企業の研究・実証で忘れてはいけないのが、倫理審査以外の社内外の手続きです。

外部の倫理審査委員会へ審査を依頼する場合には、秘密保持契約(NDA)や業務委託契約、社内稟議、発注・購買手続きなどが必要になる場合があります。

特に企業では、法務部門による契約内容の確認に要する期間も、審査を開始できる時期を左右するポイントの一つです。

外部の審査機関側で速やかに手続きを進められる場合でも、自社の法務確認や社内承認に時間を要すれば、その分、契約締結や審査開始の時期も後ろにずれる可能性があります。

また、契約内容について修正や確認事項が生じれば、双方でのやり取りが必要となるため、さらに時間を要することもあります。医療機関や大学、他企業などと共同で研究を実施する場合には、関係機関との調整にも時間が必要です。

たとえば、「来月から実証実験を始めたいので、すぐに倫理審査をお願いしたい」と思っていても、契約や社内手続きが完了していなければ、予定どおり審査を開始できない可能性があります。

だからこそ、「審査には何日かかりますか?」だけではなく、「希望する研究開始日から逆算すると、いつから準備を始めればよいですか?」という視点を持つことが大切です。

研究・実証の開始時期が決まっている場合には、倫理審査に必要な期間だけでなく、自社の契約・法務・発注等にどれくらいの期間が必要なのかも含めて、全体のスケジュールを考えることが重要です。

そのため、倫理審査が必要になることが分かった段階で、審査直前まで待つのではなく、早めに依頼先へ相談しておくことをおすすめします。研究計画書がまだ完成していない場合でも、研究・実証の開始希望時期や現在の準備状況を共有しておくことで、必要な手続きやスケジュールを整理しやすくなります。


5.研究計画書は「倫理審査を受けるためだけの書類」ではない

研究計画書を作成するとき、倫理審査に必要な項目を埋めることに意識が向きがちです。

しかし、研究・実証を事業につなげていくためには、単に申請書類を完成させることだけが目的ではありません。

研究を始める前に、

「今回の研究・実証で、本当に何を明らかにしたいのか」

「その目的を確認するために、必要なデータを取得できる設計になっているか」

を整理しておくことも重要です。

実際に研究を開始してから、

「この項目も確認しておけばよかった」

「取得しておくべきデータが足りなかった」

「本当に確認したかったことと、設定した評価項目が少しずれていた」

と気づいても、後から取得できないデータもあります。

研究計画書は、単に倫理審査を受けるための書類ではありません。

研究の目的、対象、方法、取得するデータ、解析方法、研究対象者への配慮などを整理し、「何のために、どのような研究を行うのか」を明確にするための設計図でもあります。

単純に書類を作成するだけではなく、研究目的や実証によって確認したいことを整理したうえで、研究計画へ落とし込んでいくことが大切です。


6.継続的に研究・実証を行う企業では、社内での進め方を整理することも重要

ヘルスケア領域で複数の研究やPoC、実証実験を継続的に行っている企業では、新しい企画が生まれるたびに、

「これは倫理審査が必要なのか?」

「そもそも研究に該当するのか?」

「どのような研究デザインにするのか?」

「この方法でデータを取得してよいのか?」

「医療機関とはどのように役割分担するのか?」

といった検討が必要になることがあります。

そして実際には、こうした倫理審査を申請する前の検討に、想定以上に時間がかかることも少なくありません。

研究や倫理審査に慣れていない場合、「誰に確認すればよいのか」「何を決めれば次に進めるのか」が分からず、社内外の関係者との確認を繰り返すうちに、研究・実証そのもののスピードが落ちてしまうこともあります。

だからこそ、倫理審査が必要だと分かってから申請準備を始めるだけではなく、企画・研究設計の段階から、研究として整理すべきことや研究倫理上の論点を確認しておくことが重要です。

また、複数の研究・実証を継続的に行う企業では、案件ごとにゼロから検討するのではなく、社内で一定の判断基準や進め方を整理しておくことで、次の研究・実証も進めやすくなります。

倫理審査の前段階から相談できる体制も選択肢

ヘルスケアサーカスでは、倫理審査そのものだけでなく、その前段階となる研究・実証の進め方についても支援しています。

「そもそも研究に該当するのか」「倫理審査が必要なのか」といった要否判断から、研究目的・研究デザインの整理、医療機関等との役割分担、研究を進めるうえで整理すべき事項など、企業が研究・実証を進める過程で生じる課題について継続的に支援することも可能です。

倫理審査を「申請するときだけの手続き」として考えるのではなく、研究・実証を適切かつスムーズに進めるための一連のプロセスとして捉えることが大切です。


7.まとめ「審査に何日かかるか」だけでスケジュールを決めない

倫理審査の費用や期間は、企業が研究・実証を計画するうえで重要な情報です。

しかし、「審査費用はいくらか」、「審査には何日かかるか」だけでは、必要な予算や研究開始までのスケジュールの全体像は分かりません。

倫理審査の依頼先を検討する際には、費用だけでなく、自社の研究内容に応じた審査を受けられるかという視点も重要です。

また、研究・実証を開始するまでには、研究内容の整理や申請資料の準備だけでなく、実際の運用方法の検討、契約、法務確認、社内手続き、関係機関との調整などが必要になる場合があります。

だからこそ、研究・実証の開始時期が決まっている場合には、

「倫理審査をいつ受けるか」ではなく、「いつから準備を始めるか」という視点が重要です。

ヘルスケアサーカスでは、人を対象とした研究・実証に関する倫理審査に加えて、倫理審査の要否判断、研究デザイン、研究計画書等の作成、研究・実証を進めるための運用などについても支援しています。

単に申請書類を作成するのではなく、「この研究で何を明らかにしたいのか」「そのために何を確認・取得しておく必要があるのか」という段階から、一緒に整理することも可能です。

倫理審査が必要になることが分かった場合や、研究・実証の開始時期が決まった場合には、審査直前ではなく、できるだけ早い段階から準備を進めることをおすすめします。


よくある質問(FAQ)

Q1.倫理審査にはどれくらいの費用がかかりますか?

倫理審査の料金体系は審査機関によって異なります。一定の審査料を設定している場合もあれば、審査方法や研究内容、共同研究機関の数などによって異なる場合もあります。

費用だけでなく、自社の研究内容に応じた審査を受けられるかという視点も重要です。具体的な費用については、研究内容を伝えたうえで確認する必要があります。

Q2.倫理審査にはどれくらいの期間がかかりますか?

審査期間は、審査方法や申請内容、資料の準備状況、修正の有無などによって異なります。

大切なのは、「審査期間=研究・実証を開始できるまでの期間」ではないことです。

研究計画書等の準備に加え、企業では契約、法務確認、社内承認などにも時間がかかる場合があります。研究・実証の開始日から逆算して、余裕をもって準備を進めることをおすすめします。

Q3.研究計画書が完成していなくても相談できますか?

はい。必ずしも研究計画書が完成している必要はありません。

ヘルスケアサーカスでは、倫理審査だけでなく、研究デザインや研究計画書等の作成についても支援しています。研究・実証の開始時期が決まっている場合には、計画書が完成する前の段階からご相談いただくことも可能です。


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