ヘルスケア事業に挑戦する企業のための倫理審査ガイド Vol.2
倫理審査の外部委託先はどう探す?企業が知っておきたい外部IRBの選び方【2026年版】

「倫理審査を外部委託したい。でも、どこに頼めばいい?」
ヘルスケア領域で研究や実証実験を進める企業から、このようなご相談をいただくことがあります。
倫理審査が必要になる可能性があることは分かった。しかし、自社には倫理審査委員会がない。
そこで調べてみると、「外部IRB」「倫理審査の外部委託」といった言葉が出てくるものの、
「結局、倫理審査はどこに委託すればいいの?」
「企業からでも依頼できる倫理審査委員会はある?」
「大学や病院以外にも倫理審査の外部委託先はある?」
と、新たな疑問が出てくるのではないでしょうか。
結論からいうと、自社に倫理審査委員会がない場合でも、研究内容や実施体制等に応じて、外部の倫理審査委員会へ審査を依頼するという選択肢があります。
一方で、倫理審査の外部委託先は、「審査してくれるところなら、どこでもいい」というわけではありません。
どのような研究を審査しているのか、外部からの依頼を受け付けているのか、自社が予定している研究を適切に審査できるのかなど、確認しておきたいポイントがあります。
また、外部IRBへ倫理審査を委託したからといって、研究を実施する企業側の責任や必要な体制までなくなるわけではありません。
本記事では、企業が倫理審査の外部委託先を探す際に知っておきたい、外部IRBの基本的な考え方について解説します。
※「そもそも自社の実証・研究に倫理審査が必要か分からない」という方は、Vol.1「倫理審査は必要?不要?企業が知っておきたい判断基準【2026年版】」もあわせてご覧ください。
1.そもそも倫理審査は外部委託できる?
大学や医療機関では、組織内に倫理審査委員会が設置されていることがあります。
一方、ヘルスケア領域へ新たに参入する企業や、人を対象とした研究を頻繁には実施していない企業では、
「自社に倫理審査委員会がない」というケースも珍しくありません。
だからといって、「自社に倫理審査委員会がない=研究できない」とは限りません。
研究内容や実施体制、適用される法令・指針等に応じて、外部に設置された倫理審査委員会へ審査を依頼する方法があります。
このような方法について、
- 倫理審査の外部委託
- 倫理審査の委託
- 外部IRBへの依頼
- 倫理審査の外注
などの言葉で検索されることがあります。
ただし、「倫理審査の外注」という言葉からイメージされるような、単なる業務のアウトソーシングとは少し異なります。
外部の倫理審査委員会へ審査を依頼する場合にも、研究を実施する側には必要な対応や責任があります。
2.外部IRBとは?
「IRB」は、Institutional Review Boardの略称です。
日本では、研究について倫理的・科学的な観点から審査する「倫理審査委員会」などを指す言葉として使われることがあります。
そして、自社・自機関以外の倫理審査委員会へ審査を依頼する場面で、「外部IRB」という表現が使われることがあります。
例えば、
「自社に倫理審査委員会がない」
「企業主体で人を対象とした研究を行いたい」
「研究や実証を行うために外部の倫理審査委員会を探している」
といった企業にとって、外部IRBは選択肢の一つとなります。
ただし、外部IRBを見つけたからといって、すべての研究について審査を依頼できるとは限りません。
研究の内容や実施体制、適用される法令・指針、各倫理審査委員会の審査対象等を確認する必要があります。
3.倫理審査の外部委託先は「どこでも同じ」ではない
では、実際に倫理審査の外部委託先を探す場合、どのように考えればよいのでしょうか。
まず知っておきたいのは、
「倫理審査委員会であれば、どこに依頼しても同じ」ではない、ということです。
倫理審査委員会には、大学や医療機関などに設置されているもののほか、外部からの倫理審査を受け付けている委員会もあります。
ただし、それぞれの委員会で、審査の対象や外部からの依頼の受付範囲、運用等が異なる場合があります。
大学・医療機関の倫理審査委員会の場合
大学や医療機関に設置された倫理審査委員会では、その機関で実施される研究や、その機関が関与する共同研究などを中心に審査しているケースがあります。
そのため、大学や医療機関と共同研究を行う場合には、その研究機関の倫理審査委員会へ審査を依頼することが選択肢となることがあります。
一方で、「その大学・医療機関は研究には関与せず、倫理審査だけをお願いしたい」
という場合には、外部からの依頼を受け付けていなかったり、受け付けていても条件や手続きが異なったりする場合があります。
また、大学や医療機関では、自機関で実施する研究や共同研究などの審査が中心となるため、外部から審査のみを依頼する場合には、受付から審査までに時間を要するケースもあります。
研究や実証の開始時期が決まっている場合には、審査を依頼できるかどうかだけでなく、受付時期や審査までの期間についても、早めに確認しておくことが重要です。
そのため、「倫理審査委員会がある=自社からすぐに審査を依頼できる」とは限りません。
審査できる研究の範囲にも違いがある
もう一つ確認したいのが、その倫理審査委員会がどのような研究を審査しているのかという点です。
研究にはさまざまな種類があり、研究内容によって求められる専門性も異なります。
特定の領域を中心に審査している委員会の場合、自社が予定している研究が審査対象の範囲から外れていたり、研究内容によっては適切な審査体制を組むことが難しかったりする可能性もあります。
そのため、外部IRBを探すときは、「外部から依頼できるか」だけではなく、「自社の研究を適切に審査できる委員会か」という視点を持つことが大切です。
4.「費用」と「審査期間」だけで委託先を決めない
倫理審査の外部委託先を探していると、「費用はいくら?」「何日で審査してもらえる?」という点が気になるかもしれません。
もちろん、事業を進める企業にとって、費用やスケジュールは非常に重要です。
審査費用を抑えられること、予定している研究開始日に間に合うことは、委託先を検討するうえで大切な条件です。
ただし、「安い」「早い」だけで委託先を決めることには注意が必要です。
倫理審査は、単に研究計画に対して「承認」「不承認」と判断することだけが目的ではありません。
大切なのは、研究を適切に進められる状態にすることです。
研究計画に不足している点や、研究対象者の権利・安全の観点から確認が必要な点があれば、研究開始前にそれらを明らかにし、必要に応じて計画を見直していくことにも意味があります。
そのため、「審査に通るか、通らないか」だけではなく、
「研究をより適切に進めるために、必要な指摘や助言を得られるか」という視点も、外部IRBを選ぶうえで重要です。
審査の過程で確認事項や修正点が示されると、一見すると「時間がかかる」と感じるかもしれません。
しかし、研究開始後に問題が発覚し、計画の大幅な変更や研究のやり直しが必要になることを考えれば、研究開始前に必要な論点を整理できること自体が、倫理審査の大きな価値の一つです。
費用や審査期間だけではなく、「自社の研究内容を適切に理解し、必要な審査や助言を行ってもらえるか」という観点も含めて、委託先を検討することをおすすめします。
Point
倫理審査は「審査をすること」そのものがゴールではありません。
研究を適切に進めるために、研究開始前に必要な論点を確認することが大切です。
5.外部IRBに委託すれば、研究の責任も外部に移る?
ここは、企業の方に特に知っておいていただきたいポイントです。
外部IRBへ倫理審査を委託すると、
「審査を外部にお願いしたので、研究についても外部IRBが責任を持ってくれる」
と思われることがあります。
しかし、倫理審査を外部へ依頼することと、研究を実施する側の責任まで外部へ移ることは同じではありません。
倫理審査委員会は、研究計画について倫理的・科学的な観点から審査を行います。
一方で、実際に研究を実施・管理するのは研究を行う側です。
そのため、外部IRBへ審査を委託する場合でも、研究を実施する企業・研究機関には、研究を適切に行うために必要な体制や対応が求められます。
つまり、
「審査を受けること」と「研究を適切に実施できる体制を整えること」は別です。
外部IRBへの委託によって倫理審査を受けることはできても、それだけで研究実施に必要な準備がすべて完了するわけではありません。
「倫理審査を外部委託したから、あとは研究を始めればよい」と考えるのではなく、研究を実施する側として何を準備し、どのように研究を管理していくのかまで考えることが重要です。
6.「研究実施体制を整える」と言われても、何をすればいいか分からない
ここで企業の方から、
「研究実施体制が必要なのは分かった。でも、具体的に何を準備すればいいの?」
というご相談をいただくことがあります。
特に、これまで人を対象とした研究を実施した経験がない企業では、
- 社内で誰が何を担うのか
- どのようなルールや手順を整える必要があるのか
- 研究開始前に何を確認しておくべきなのか
- 研究開始後にどのような管理が必要になるのか
など、そもそも何から確認すればよいか分からないことも珍しくありません。
そして、必要となる体制や対応は、研究内容や実施方法、企業の関わり方等によっても異なります。
そのため、インターネット上のひな形を用意するだけで十分とは限りません。
重要なのは、自社がどのような研究を、どのような体制で実施するのかを踏まえて、必要な準備を整理することです。
倫理審査を受けることだけをゴールにするのではなく、その後、研究を適切に実施できる状態まで考えておくことが大切です。
7.倫理審査の外部委託先を探すのは、研究計画が完成してから?
「外部IRBへ相談するなら、研究計画書を完成させてから」と思われることがあります。
しかし、必ずしもすべての計画を固めてからでなければ相談できないとは限りません。
例えば、
「そもそも倫理審査が必要なのか分からない」
「自社に倫理審査委員会がない」
「企業から依頼できる外部IRBを探している」
「どこへ倫理審査を委託すればよいか分からない」
「倫理審査だけでなく、研究実施に向けて何を準備すればいいのか分からない」
という段階で、まず相談する方法もあります。
研究・実証の開始直前になってから必要な対応が分かると、スケジュールや計画を見直さなければならない可能性があります。
そのため、倫理審査については、研究・実証の早い段階から確認しておくことをおすすめします。
8.ヘルスケアサーカスも、倫理審査の外部委託先の一つです
ヘルスケアサーカスでは、企業等からの研究倫理審査を外部から受け付けています。
自社に倫理審査委員会がない企業や、外部IRBを探している企業からのご相談にも対応しています。
また、ヘルスケアサーカスでは、単に研究計画の「承認・不承認」を判断することだけを目的としていません。
研究を適切に進めるために、審査の過程で確認が必要な点を整理し、必要に応じて研究計画の見直しにつながる指摘や助言を行うことも大切にしています。
「審査を通すこと」ではなく、「研究を適切に進めること」を支援する。
これが、私たちが倫理審査や研究支援において大切にしている考え方です。
そのため、倫理審査だけでなく、企業がヘルスケア領域で研究・実証を適切に進められるよう、
- 倫理審査の要否に関するご相談
- 研究・実証内容の整理
- 研究設計
- 研究計画書等の作成の助言・サポート
- 倫理審査
- 研究実施に向けた体制づくり
- 研究開始後の運用に関する支援
など、研究・実証の状況に応じた支援を行っています。
特に、
「倫理審査を受ける必要があることは分かった。でも、自社では何を準備すればいいの?」
という段階からご相談いただくことも可能です。
研究内容や企業の状況を確認しながら、研究を実施するためにどのような体制を整える必要があるのかというところから支援しています。
「倫理審査を外部委託したい」
「企業から依頼できる外部IRBを探している」
「どこに倫理審査を依頼すればいいか分からない」
「審査だけでなく、研究を実施するために何を準備すればよいか分からない」
「まだ研究計画が固まっていない」
という段階でも、お気軽にご相談ください。
まとめ 外部IRBは「審査してくれる場所」だけで選ばない
自社に倫理審査委員会がない場合でも、外部の倫理審査委員会へ審査を依頼できる場合があります。
一方で、倫理審査の外部委託先は、「どこでも同じ」ではありません。
大学や医療機関など、それぞれの倫理審査委員会によって外部からの依頼を受け付ける範囲や審査対象が異なる場合があります。
また、研究内容によって、審査に必要となる専門性も異なります。
そのため、外部IRBを探す際には、「依頼できるか」だけではなく、「自社の研究を適切に審査できるか」という視点を持つことが重要です。
費用や審査期間ももちろん重要です。
しかし、倫理審査の目的は、できるだけ早く「承認」を得ることではありません。
研究を適切に進めるために、研究開始前に必要な論点を確認すること。
そして、必要であれば研究計画を見直し、より適切な形で研究を開始できる状態にすることが大切です。
さらに、倫理審査を外部委託しても、研究を実施する側に必要な責任や体制までなくなるわけではありません。
だからこそ、倫理審査の外部委託先を探すときには、「審査してもらえるか」だけではなく、「その先の研究を適切に進められるか」まで考える。
この視点を持っておくことをおすすめします。
ヘルスケアサーカスでは、企業等からの倫理審査を外部から受け付けるだけでなく、研究設計や研究実施体制の構築など、研究・実証を適切に進めるための支援も行っています。
「倫理審査の外部委託先を探している」
「自社の場合、何を準備すればいいのか分からない」
という段階でも、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年8月時点の情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の研究における倫理審査の要否、審査依頼の可否、必要な手続き等は、研究内容、適用される法令・指針、実施体制、審査を行う倫理審査委員会等によって異なります。