医療やヘルスケアの分野では、「本当にこの商品やサービスは役に立つのか?」を確かめるために研究が行われます。
そのときによく出てくるのが 前向き研究 と 後ろ向き研究 という方法です。
言葉だけ聞くと難しそうですが、実は「時間のどちらを向いてデータを集めるか」というシンプルな違いです。
前向き研究とは?
前向き研究は「今から未来に向けてデータを集めていく」方法です。
たとえば、新しい低反発まくらを使う人と使わない人を比べて、半年後に「ぐっすり眠れたか」「日中の疲れが減ったか」といった生活の質(QOL)の変化を追いかけて調べます。
- 良い点:未来に向けて観察するので、因果関係をはっきりさせやすい
- 気をつけたい点:時間がかかり、費用も大きくなることが多い
後ろ向き研究とは?
後ろ向き研究は「すでにある記録を振り返る」方法です。
たとえば、病院に残っている診療録を調べて「過去に低反発まくらを使っていた人と使っていなかった人で、睡眠の状態に違いがあったか」を比べる、といったやり方です。
- 良い点:短期間ででき、コストも抑えやすい
- 気をつけたい点:過去のデータは抜けがあったり、偏りが入りやすい
横断研究との違い
もうひとつよく使われるのが「横断研究」です。これは、一時点のデータを切り取って比べる方法です。
たとえば「今年の健診データとアンケートを使って、普段の睡眠環境と血圧の関係を見る」といった調査がこれにあたります。
- 手軽でシンプルですが、「原因と結果」をはっきり示すことは難しいのが特徴です。
倫理審査はどんな研究にも関わる
ここで大切なのは、前向き研究も後ろ向き研究も、人のデータを扱う以上は多くの場合、倫理審査が必要になる可能性が高い という点です。
- 前向き研究:新しく人から情報を集めるため、説明や同意の内容を確認
- 後ろ向き研究:既存データを使うため、匿名化やプライバシー保護の妥当性を確認
ちょっとした思い違いで「倫理審査が必要だったのに通していなかった」となると、せっかくの研究やデータを発表できなくなることもあります。
ヘルスケア商品を扱う方へ
研究デザインや倫理審査は、大学や病院だけに関係するものではありません。
サプリメント、デジタルヘルスアプリ、ウェアラブル機器など、ヘルスケア商品の開発やサービス設計 にも深く関わってきます。
実際に、よくあるご相談のひとつが…
- 「モニター調査だから倫理審査はいらないですよね?」
- 「匿名にしたから大丈夫ですよね?」
こうした疑問を持つのは自然なことです。ただ、実際には質問の仕方、内容、データの出し方などによって、倫理審査が必要になるケースが多くあります。
安心して商品やサービスを社会に届けるために、研究方法と倫理審査をきちんと理解しておくことが、結果的に大きな信頼につながります。
まとめ
- 前向き研究:未来に向けて追跡 → 信頼性が高いが時間と費用がかかる
- 後ろ向き研究:過去の記録を振り返る → 手軽だがデータの偏りに注意
- 横断研究:ある一時点を比較 → 因果関係を証明するのは難しい
ヘルスケアサーカスでは、研究者の方はもちろん、ヘルスケア商品を企画・開発する企業の皆さまのサポートも行っています。
「どんな研究に倫理審査が必要なのかよくわからない」と思われたら、ぜひお気軽にご相談ください。